都戸利律 『環状白馬線 車掌の英さん』
- 作者: 都戸利津
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2009/01/19
- メディア: コミック
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「一緒に時を過ごせるのは乗り合わせた人だけだ
だから
ほんの少しでも乗り合わせたなら幸運だ」
感想
人と人とを紡ぐきれいな物語でした。絵本になりそうなくらい、いやむしろ絵本よりも澄みきっているお話でした。天野こずえさんの『あまんちゅ!』のような純粋で、どこかくすぐったくなるような感じも受けました。
シティ内を走る環状白馬線の車掌として勤める英さん。彼は、ちょっとぶっきらぼうな物腰です。彼は、世界のほんの一部の、でも様々な人たちと、わずかな時間を共に過ごします。わずかで一部かもしれないけれど、知らない誰かと知らない誰かをつなぎあわせるのが電車ならば、それは世界の全部を走っているのかもしれません。つまり、英さんは、少々として、人を紡ぎあわせるという偶然の幸福を人々に届けているのです。だから、人々は、車掌の英さんと乗り合わせると、幸せになれる、なんて考えてしまうのかもしれません。
素敵だと思った言葉は、冒頭の言葉と、もう一つの言葉。それは、「出会いと別れは同じだけあるが 一番多いのは”出会わない”だ」、です。出会える人、別れてしまう人は、ほんのわずかということです。このことは当たり前かもしれません。けれど、そんな当たり前のことを忘れてしまいがちだと思い、考えさせられました。
また、都戸さんの作品を読むのは初めてですが、構成に恐ろしいほど無駄がないと思いました。そういう意味でもきれいな作りだと思いました。