矢沢あい 『天使なんかじゃない』

天使なんかじゃない 1 (集英社文庫(コミック版))

天使なんかじゃない 1 (集英社文庫(コミック版))


「うれしい時はちゃんと喜んで
悲しい時はちゃんと泣けるような
そんな あたり前のことが
みんな 意外と 出来なかったりするのよ」

感想

「あたしは冴島翠みたいになりたい。」本作はこの一言に尽きると思います。自分は男ですが、翠みたいな女の子に、女の子は憧れるんだろうなあ、と思いました。元気で、明るくて、しっかり者で、クラスどころか学校のムードメーカーで、生徒会役員で、そこで恋人を見つけて…、なんていくらでも挙げられそうですね。一言でいえば、同性からも異性からも好かれるような人です。そんな人は、女性にとって憧れだと私は思っています。同時に、男にとっても、翠みたいな人は憧れる人だと思います。


それから、対極的な人物として麻宮を翠の近くに配置したこともうまいと思いました。彼女は、美人で秀才ではあるものの、意地っ張りで素直じゃなくて、翠みたいな人気者でムードメーカーではありません。そんな彼女を近くに置くことによって、読者が感情を移入できる場所を作ることにつながったと思います。


また、新しい情報の出し方がうまいと思いました。ほとんど、人物や関係の設定を説明していないんじゃないかと思います。全て、登場人物の行動と説明から語られています。よって、一人一人のコミュニケーションや反応に矛盾がないと思いました。そこから、臨場感があって、キャラクターが生き生きとしていると感じました。