シギサワカヤ 『溺れるようにできている。』


一途な恋の葛藤と成長。



―あらすじ―


内気な女子大生の佳織の初めての彼は幼馴染み。
そして8歳年上で東京で一人暮らしの社会人。
時間と距離を埋めようとしても、なかなかうまくいかない。
心の中で重くなっていく恋のため、情緒不安定になる。
まるで溺れるよう…

―感想―


恋を通じて新しい感情を得ていく過程が描かれていて楽しめました。
とっても切なく、とっても微笑ましいです。


物語は彼女の葛藤と成長を軸に進められます。


相手を好きになればなるほど、自分が特別な存在であって欲しいと思います。
特別ならば相手のすべてを知りたいとも思います。
けれども、自分にとって都合の悪いことは聞きたいとはあまり思えません。
それを、受け入れた上で対処するのか。
それとも都合のいいように解釈をねじ曲げるのか。
どっちも長所と短所があり一様には言えません。
主人公の女の子はどちらかというと、後者のほうです。
彼女はそんな自分を見ることができませんでした。
でもアルバイト中に、自分に気が付くことになる出来事が起こります。
よく思われたい、認められたい感情に溺れる自分を発見して、彼女は受け入れることができる強さも身につけることになりました。
そんな彼女の成長が繊細に描かれているところが切なかったです。


それだけならばいい話…ですがそうはいきません。
ところどころに一途ゆえの勘違いが見え隠れします。


最後には知らなかった彼のダメな部分を彼女は知ることになります。
食に対する執着な部分、意外と変態な部分。
そして緊張して手が冷えていたのではなく、単なる冷え症だった部分…
知った彼女はちょっと複雑な気分になります。
ダメな部分をようやく知りあう二人の恋愛が可笑しくも微笑ましかったです。