羽海野チカ 『ハチミツとクローバー』

ハチミツとクローバー 1 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 1 (クイーンズコミックス)


青春というぬるま湯の中で繰り広げられる恋模様。
叶った恋のひたむきさと一致を。
そして叶わぬ恋の切なさと意味を。

―あらすじ―


「人が恋に落ちる瞬間を始めて見てしまった」


先生が連れてきたはぐみに一目惚れする竹本と森田。
そしてバイト先の社長に恋をする真山と、真山に片思いの山田。
この五人の中で友情と恋愛が絡み合う。

―感想―


この作品は、二つの恋愛関係によって構成されています。


一つは、森田と竹本、そして花本先生がはぐみをめぐって、という関係です。
この関係には、才能の有無および人生の目的という二つの要素で構成されています。
才能を持つのは、はぐみと森田です。
このため、二人は徐々に惹かれあいます。
しかし、人生の目的の不一致のために二人が結ばれる事はありませんでした。
花本先生によるサポートを必要とするはぐみ。
はぐみをサポートする事により、自らの希望をかなえてもらう花本先生。
惹かれあいながらも結ばれない切なさがこみ上げてきます。
また、どちらにも満たす事の出来ない竹本は、自分の核となるものがないことに気が付きます。
はぐみに同等に立てず、サポートもできない状況に、様々な負の感情を持ちます。
最後には、はぐみに恋した経験をプラスに考える事ができます。
竹本の成長もこの関係の見所だと思います。


もう一つの関係は、山田→真山→理花という関係です。
こちらは恋愛そのものが中心です。
山田と真山の間、そして真山と理花の間は平行の状態が長く続きます。
片思いの間は、相手の行動に一喜一憂する姿が詳細に描かれます。
屋台で取ってくれたぬいぐるみを抱きしめたり、
一瞬見かけた姿を思い出して道を引き返したり、と甘酸っぱい描写がてんこ盛りです。
そんな甘酸っぱい状況も永遠ではなく、日々変化していきます。
真山の執念が実り始めたり、山田を想う人物が出てきて悩み始めたり、ということが起きていきます。
そこでは、理花が真山に観念する瞬間および山田が好かれた相手への態度に思い悩む描写にはとても説得力があると思います。


この作品は恋愛への視点が複数あり、多くの人がいづれかの視点に共感できるのではないのかと思います。
私は竹本に共感し、竹本視点でこの作品を読んでいました。
あなたは、どの人の視点で読みましたか?