ひぐちアサ 『ヤサシイワタシ』

ヤサシイワタシ(1) (アフタヌーンKC)

ヤサシイワタシ(1) (アフタヌーンKC)


後悔と無力感をどうやり過ごすのか?
そしてその先で願うものは?

あらすじ


怪我のためにテニスを挫折した弘隆は、大学で写真サークルに入る。
そこで問題児である弥恵と出会う。
弥恵が丁度問題を起こしたところをフォローした事から、二人は付き合いだすが…

感想


物語の重さが心に残りました。
心にパンチを何度もくらわされました。
私は届かなかった思いの後悔と無力感がいちばん印象に残りました。


弥恵は積極的に行動するという長所を持っているが、我慢や計画性がなく、周りとも衝突することが多いという短所も持つ人でした。
弘隆は弥恵の長所に惹かれていました。
過去にテニスを真面目にやっていた時に、それが原因で浮いた事があるからです。
弥恵の短所について弘隆は難儀だと思っていましたが、それでも関わりたいと思うようになりました。
弥恵のことを好きだからこそ、弥恵の自分を損なうような行動をなんとかしたかったのです。
でもその思いは届きませんでした。


真剣な思いを否定されるのはとても辛い事です。
他に何かできなかったのかという後悔と自分の行為を否定されるかのような無力感が押し寄せてきます。
それをどうやったら過ごせるのでしょうか?
作中で答えは出されていません。


「ヤサシイ」人であってほしいと願うことしかできないのかもしれません。
心を大きく揺さぶられる作品であるため、向き合う価値があると思います。