あずまきよひこ 『あずまんが大王』

あずまんが大王 (1) (Dengeki comics EX)

あずまんが大王 (1) (Dengeki comics EX)


緩やかな日常をさらに緩やかに。
コマを追う時間も緩やかに。
そして緩やかに押し寄せる些細な出来事たち。


たいしたことないようで、たいしたことあるかもしれない奇妙な作品。

―あらすじ―


天才10歳児ちよちゃん。
寡黙でクールにみえるが可愛い物好きな榊さん。
暴走ムードメーカー智。
智の突っ込み役で常識人のよみ。
超天然ボケの大阪。
体育会系の神楽。


彼女達のなんてことない高校生活三年間。



―感想―


読み進めていくうちに、段々とペースにはまっていきました。
巻を重ねるごとに登場人物のかけあいが楽しくなってきました。


なんともいえない緩やかな雰囲気を作り出している原因は何なのでしょう。
この点がとてもひっかかるのです。
考えてみて、思いついた要因は時間経過です。


この作品は、高校三年間を四巻という量で描いていきます。
だいたい一月につき一〜三話です。
最初のうちは、内容もキャラクターの表面的なものが主です。
ちよちゃんの天才っぷりや、榊の猫好きっぷり、大阪の大阪ネタなどが代表的なものです。
その際には、話の主題はキャラクターの特徴であり、人と人との関係ではありません。
関係性が描かれているのが、六人の中では小学校からの付き合いである智とよみだけです。
その他のキャラの相手は不特定です。


巻を重ねるごとに内容が変化していきます。
どちらかというと、六人の中でのやりとりが主になっていきます。
智とよみのやりとりに大阪が混じり、よみが更に突っ込み役になるとか、
ちよちゃんと榊さんが忠吉さん(ちよちゃんの飼い犬)の散歩に行くとか、
神楽、智、大阪の三人のバカトリオが結成されたりとか…
六人、一人一人とその内部での関係が描かれるようになります。
そのため、話の主題はキャラクターよりも日常のなんてことないやりとりへと移ります。
日常のやりとりと、それへと変化していく過程が緩やかな雰囲気を作り出していると思えました。


また、やりとりを4コマで区切っていることが緩やかさを上手く見せられていると思います。
その例として、沈黙の間を4コマの一つとして取り入れていることが挙げられます。
大阪のボケを理解する時間や、
よみが食べるのを我慢している時間、
榊さんがかわいいものに呆けている時間など…
これらを4コマで取り入れることにより、緩やかな日常をテンポよく見せることが可能になっています。


以上のような、どうでもいい日常のやりとりをテンポよくほわほわと眺められる作品でした。