片山ユキヲ 『空色動画』

空色動画(1) (シリウスKC)

空色動画(1) (シリウスKC)


余計なことは考えなくていい、ただおもしろいからやる。
「ジョンは人のやってることに「おもしろい」ってとびついてきて最高のトコロまでひっぱってってくれるんだ!」
「孤独でもやもやしてる創作者を救済してくれるんです!」




―感想―


 女子高校生がみんなで集まってアニメを創るというお話です。ただ、アニメだからといって、彼女たちは「オタク」という訳ではありません。むしろアニメとは縁の遠そうな子たちばかりです。


 中心人物は、ジョンとノンタとヤスキチの3人です。アニメをやるきっかけを作り、後の二人を巻き込み引っ張っていくのはジョンです。彼女は、アメリカからの帰国子女で、そのせいかはわからないけれども、面白いことには飛びついて、すぐに実行に移します。画が生きているみたいに動いている、だから面白かった。ただそれだけ、他の理由もなく、ジョンは「みんな」でアニメを作ろうと動き出します。


 他の二人はジョンとは違って、アニメが面白いから、アニメ作りに参加したわけではありません。ノンタは、家のことや学校のことでモヤモヤした気持ちがあって、それをパンクにぶつけていました。それと同じようにアニメに取り組み始めました。ヤスキチは、クラスで孤独であり、それを画を描くことで紛らわしていました。そのため、アニメ作りは唯一の救済でした。こんな風に3人はそれぞれ違います。ただ、ノンタとヤスキチは、自分が抱え込んでいた気持ちを、ジョンは吹っ飛ばしてくれるという点で、ジョンに惹かれていました。ただ面白いからやる。それだけで楽しいんだ、ってことをジョンは体現しています。なんか、面白い!楽しい!っていうのが3人を通じて伝わってきました。なんだかまぶしくて羨ましいなあ、っていう気持ちになりました。


 また、描写がアニメの「動」の側面を表していて、アニメの面白さを引き立てているように思いました。アニメを表しているところとそれ以外とで表現方法が違うのです。その一つは線の太さです。アニメの部分はアメリカチックなアニメによくある太さで、デフォルメされています。アニメの部分は、まるでパワーパフガールズみたいです。この線の太さで、違いを表現しています。もう一つは、これが動きを表しているのですが、アニメの内容がマンガの中の風景から飛び出て表現されているところです。マンガの中のアニメは、普通テレビの画面から出てきません。または、コマの中でアニメだけを表現していると思います。けれど、本作では、アニメとそれ以外が一緒に出てきて、しかも建物を破壊していったりする描写がたくさん出てきます。そこが本当にダイナミックで、アニメをよく表していると思いました。


 以上のように、物語と描写が上手くマッチしていて、アニメの楽しさがよく伝わってきて、こっちまで楽しくなりました。それとともに、アニメに夢中に取り組めている姿が眩しくて、どこか懐かしい気持ちにもなりました。