石川正数 『響子と父さん』

響子と父さん (リュウコミックス)

響子と父さん (リュウコミックス)


変人のお父さんと、世話焼きの長女が織りなす、コメディの皮を被ったホームドラマ
「俺が幸せでないワケがないだろ!!」

―感想―


変人のお父さんと、彼の世話を焼く長女、そして家を出て消息不明の次女の物語です。物語は、長女の結婚話と次女の消息とが主です。このように基本的な話は結構重いです。でもシリアスな話のはずなのに、途中でそんな雰囲気を微塵も感じませんでした。読んでいるときは、コメディ一直線と感じました。それにも関わらず、最後には、ほろ苦さを含んだ家族の幸せの余韻を感じました。登場人物と彼らの行動が可笑しくも人間臭くあるからなのかもしれない、と思いました。


まず父さんのキャラがいい意味でひどい。ちょっとどころじゃなくて大分変人です。模造刀を振り回したり、話が回りくどかったり、娘を妻だと言い張ったりします。見栄を張ったり、話が分かりにくかったりするようなところはとても人間臭いですし、その見栄の張りかたが可笑しいです。


他方で、長女も常識人のようで、どこかが可笑しいです。仕事の締め切りが相手方のミスで伸びたら、自分がまだ完成していないにもかかわらず、その恩を売っておこうと考えたりする。また、徹夜で寝ぼけながら描いたために、原稿に落書きをして、そのまま編集に渡してしまったりもします。


このように、どこか変わっているところや、失敗するところを前面に出してきているために、重い話が可笑しくて面白く、でも結末はちょこっと甘く、ちょこっと苦いのだと思えるのではないでしょうか。